狭心症・心筋梗塞患者への麻酔管理の実際
−Off-pump冠動脈バイパス術から非心臓手術まで− 

はじめに

 近年,術後の早期回復や低コストを標榜して内視鏡を用いた手術侵襲を抑える手術方法が工夫され広く行われている。心臓手術もその例外ではなく,患者への手術侵襲を抑え,肉体的負担のみならず,経済的負担までも軽減する目的で新しい手術方法や機材が開発されている。特に冠動脈手術ではMIDCABやoff-pump冠動脈バイパス術がすでに臨床応用されている。今日では健康保険加算も加えられ,一定の市民権を得た標準的な手術手技になった感がある。
 さらに,冠動脈インターベンションの発達や薬物の開発,薬物療法の進歩などにより,手術に至る患者の高齢化・重症化が進んでいるが,と同時に,心疾患を有する患者への非心臓手術の機会も増えている。このため周術期の全身管理を行ううえで麻酔科医の負担は大きく,新しい知識と技術の習得が課せられている。また,外科医のみならず看護師や医療技師など医療スタッフを含めたチーム医療の構築にも中心的存在として力量が問われることになる。このためにも,専門領域を越えた緊密な情報交換のもと,お互いを理解することが必要不可欠であり,麻酔科医にはそれ相応の和を伴った「知識武装」が要求されるものと思われる。
 今回ここに「狭心症・心筋梗塞患者への麻酔管理の実際」と題して順天堂大学医学部附属順天堂医院で行われている手術操作をもとに麻酔管理マニュアルを発刊するが,冠動脈管理に関連するさまざまな事柄について記載した。これによりいわゆる "心臓の悪い"ハイリスクな患者管理に対する成績向上に寄与できたら幸いである。


2003年8月
順天堂大学医学部
麻酔科学講座 助教授
西村欣也



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